CoCo Singles

1. EQUALロマンス
CoCoが音楽界に乗り込んできた痛快なデビュー作品である。この軽やかであり、他に類をみない曲調、その歌に込められた熱い気持ちを、決して熟練しているとはいえないが熱心さは十分に伝わってくる端正な歌唱で聴かせるこの曲は、本当にデビュー作にふさわしい。これはいい曲である。
2. はんぶん不思議
これはCoCoを代表する名曲である。間奏で奏でられる鐘の音は、高校などで授業の開始・終了などを知らせるチャイムの音を思い出させる。このチャイムの音を聞いて、授業に向けて集中力を高めたり、休み時間に向けて気分を解放させたりといった思い出を思い起こしたかたも多いことであろう。
3. 夏の友達
「水たまり」「プール」「ひまわり」といった単語が、まるで曲名の「夏」にちなんだ季語として散りばめられていて、夏の雰囲気を存分にかもしだすことに成功している。「夏」をテーマにした曲は数多くあるが、その中でもトップクラスに入る出来栄えなのではないかと思う。
4. ささやかな誘惑
この曲は、バックの演奏の派手で元気なさまと、フロントの歌唱の控えめで抑えられたさまとの対比が面白い。演奏のほうは成長期の青年のようなけたたましさで激しいビートで攻撃しているが、歌唱のほうはその誘惑には乗らないという真面目さが伺える。それに業を煮やした青年が、最後の最後4:24で捨て身の攻撃を放って自爆した結末が鮮烈である。
5. ライヴ・ヴァージョン
ライブアルバムでないのに「ライブヴァージョン」とはどういうことであろうか。さらに、ふつうは曲名の後に「○○バージョン」とするのが普通なのに、曲名そのものが「ライブヴァージョン」とは一体どういう精神をしているのであろうか。CoCoの不真面目な一面がうかがえる貴重な曲である。
6. ニュースな未来
この曲のキーボードの演奏には非常な凄みを感じる。まずは2:23からの間奏の出だしである。何か排水溝のような危険な場所に突き落とされたような急展開をはっきりと表現している。おそらく、テレビ放送で見られるニュース速報をイメージしているのではないだろうか。平穏な番組の中で突如として大ニュースが飛び込んでくる様である。また、3:48からの最後の締めにあたる演奏も圧巻である。これほどのインパクトと魅せつけるキーボードプレイは永遠に心に残る。
7. 無敵のオンリー・ユー
この曲で特筆すべき点は、羽田の歌唱力である。羽田の音程の正確性はかなりのレベルの高さを誇っているが、それがこの曲では存分に発揮されている。CoCoのメンバーは全体的に歌唱力に優れていると思うが、羽田は音程の正確性では一歩抜きん出てきる。
9. だから涙と呼ばないで

翼のついたGジャンとはこれのことであろうか。


10. 夏空のドリーマー
この曲では、2箇所で鈴の音を聞くことができる。前奏と終盤でひときわ甲高く鳴らされる「シャリン」という音である。鈴は数ある楽器のなかでも、習得するのが比較的容易な部類のものに入るであろう。「ピアノを習っている」というのはよく聞くが、「鈴を習っている」というのはあまり聞かない。この曲でも2箇所でしか鳴らされていないので、単独の楽器パートとして考えても、曲の大半は待機ということになっているので、そもそも鈴のパートというのを成立させるのは難しいだろう。ただ、この曲には鈴は必要である。主人公の凛とした決意のようなものが鈴の音色で良く表現されている。もしも聴いたことがないという方であれば、是非一聴していただきたい。
11. 横浜ボーイ・スタイル
この曲では横浜ボーイの特徴として、「何かを追いかけること」「決して逃げないこと」を挙げている。これらは、言うは易し・行うは難しである。横浜在住のかたはもちろんであるが、それ以外のかたがたも、心に手を当てて「自分は横浜ボーイとして輝けるであろうか」と自問してみてはいかがであろうか。
12. ちいさな一歩で
オープニングの0:24で聴かれる爆発音にどきもをぬかれる。この爆発音は、火山噴火やビックバンのような自然現象というよりは、主人公の内面で沸き起こる決意のような形而学上のハプニングを意図しているものと思われる。
13. 恋のジャンクション
cocoにしては珍しく演歌風の曲である。この曲調の激変に対し、cocoの各メンバーの適用ぶりが良く出ている作品である。本作では宮前のリズム感の良さがあぶり出されているように思う。宮前はソロで格闘家に扮したコミカルな曲を担当したが、それよりかは演歌にしたほうが本人の実力がより良く発揮されたのではと思う。
14. ユーアー・マイ・トレジャー~遠い約束
cocoの14枚目にしてラストのシングルである。デビューから積み重ねてきた経験によって音楽性の豊かさを確実に増していき、この曲では時代のはかなさをテーマにしながら貫禄のある唄いっぷりを見せており、ラストにふさわしい。デビュー作と聞き比べると、同じグループのものとは信じられない位の成長ぶりである。この曲を聴き終えたとき、自然と拍手をしていたほど、最後を締めくくるのにふさわしく、感動的なものがあった。